DEVELOPMENT研究開発

手型から製造ラインにいたるまで、すべてを自社で設計・開発する理由

手型から製造ラインにいたるまで、すべてを自社で設計・開発する理由

自社完結型の製造だからできる、ハイレベルな研究開発

画期的なアイディアは、自社内で緻密に商品化。
たゆまぬチャレンジ精神で、新たな市場開拓を目指します

「樹脂素材」 「糸や編機械」 「手型」の3つを主題に各チームを組み、研究・開発を行っています。
ショーワグローブの強みは、手型づくりから製造ラインまで自社で構築可能なこと。
手袋の形状や性能を緻密に、意図したとおりに実現できるメリットがあります。
最適な工程条件が揃うためさまざまな素材を活用できる点も、オリジナリティある商品のご提供へつながっているのではないでしょうか。

手袋の開発において、データ分析や最新の化学知識はもちろん重要です。
しかしそれを上回って、お客様の声や市場の動きをどれだけ掴めるかが大切だと考えています。
企画サイドから得るマーケティングデータ、営業部や品質保証室へ寄せられるご意見・ご要望、お求めやすい価格で提供するためのコスト意識…さまざまな観点からアンテナを張りつつ、ニーズを模索していきます。

開発本部 研究開発部 坂本眞一

開発本部 研究開発部坂本眞一

ユーザー目線の商品づくりで、安心と安全を

研究・開発の基点は「ユーザー目線」

私たちは研究者であると同時に、ユーザーの視点からも「使い勝手」を考えなければなりません。私はしばしば両親や友人に製品を渡し、 暮らしのなかで使ってみてもらいます。
結果として厳しい意見が返ってくることもありますが、ユーザー目線での商品情報というのは、開発を進めるうえで大変役立つのです。
お客様の思いを念頭に研究へ取り組む――そうしてこそ、質の高い手袋づくりが実現するのだと考えています。

ショーワグローブの手袋は国内のみならず、海外でも広くご愛用いただいています。例えば素材の柔らかさひとつ取っても、心地よいと感じる基準は国によって変わるようです。フレキシブルな対応が求められますが、"お客様目線で手袋をつくる"というポリシーは常に同じ。グローバルに愛される、各地の生活に根づく手袋を研究・開発していきたいですね。

研究・開発の基点は「ユーザー目線」

ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ”

ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ” ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ”

【開発背景】

作業用手袋においては、「機能性」と「丈夫さ」の両方を十全に備えなければならない。かつて用いられていた天然ゴム製の手袋は、どちらの点でも満足のいく出来ではなかった。万年筆のチューブづくりに携わった創業者・田中明雄が、その素材である塩化ビニル樹脂に新たな手袋の着想を得たことが、『ビニローブ』開発のきっかけとなった。
指先と手のひらは安全に厚く、裾はぬぎはめしやすいよう薄く…『ビニローブ』には、作業効率を高める工夫がさまざまに施された。しなやかに指の動きを妨げず、かつ耐久性をも備えた『ビニローブ』は、漁業を中心に各現場へと広がっていく。その後、黒のみだったカラーリングはバイオレット・ピンク・グリーンと鮮やかに。ファミリーユースとして更に浸透し、『ビニローブ』はロングラン商品へと成長を遂げた。

人の真似をしない。何もかもがオリジナル

作業性・耐久性ともに優れた性質を持つ、塩化ビニル樹脂という素材。創業者である田中が「この素材こそ生きる」と確信した製品――それが作業用手袋だった。戦時に手を激しく 痛めた仲間の記憶が、その根底にはあったという。前例のない挑戦が始まった。
田中は常に、非の打ちどころがない製品を求めた。わずかな欠陥を見つけては(ごく小さなものでも)、厳しく改善を迫った。「一つでも悪い品ができるということは、全部悪いということだ!」原料を混ぜ合わせる攪拌機、手袋を焼成するボイラー、より精密な検査方法…すべての工程に課題が山積みとなる。それを乗り越えるたび、新たなノウハウが蓄積されていった。徹底した品質重視に支えられた、熱いチャレンジングスピリッツ。こうして1954年、世界初の塩化ビニル樹脂製厚型手袋『ビニローブ』が誕生したのだった。

ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ” ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ”

【開発背景】

急速な機械化によって、1970年代の作業用手袋は大きな転機を迎えた。機械では難しい、手でしかできない精密な作業が手袋の主用途となったためだ。これまでの丈夫さ・耐久性を保ちながら、より繊細な動きを可能にする製品の開発が求められた。
当時ショーワグローブが販売していた手袋の原手(繊維製の編手袋)には、「あたると痛いので裏地の縫い目をなくしてほしい」とのご意見が寄せられていた。細かい作業の効率をアップさせたい目的とも合致し、縫い合わせのない"シームレス"な裏布手袋『ニュービニローブ』が開発された。ショーワグローブにおける、特許戦略商品・第一号となる。およそ20年間シームレス裏布手袋を独占販売できたことは、当社にとって大きな実りとなった。

高品質を武器に、"川下作戦"でシェアを広げる

シームレス裏布手袋の開発は、試行錯誤の連続だった。編手袋と違ってシームレスの原手は樹脂が染み込んでしまってうまくコーティングできない。原手の加工や樹脂の配合に工夫を重ねた。さまざまな課題をクリアし、1980年にようやく生産ラインが稼動。『ニュービニローブ』が誕生する。
柔らかい=丈夫ではないという誤った認識から、当初は売上げが伸び悩んだ。そこで『ニュービニローブ』を無料でお配りし(サンプリング)、裾野からシェアを広げる"川下作戦"を展開した。若い顧客層から愛用されはじめ、その高品質は口コミによって瞬く間に評判に。ロングランヒットへとつながった。漁業や農業から運輸/物流・自動車関連業や建築まで、現在も幅広い分野で用いられている。

ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ” ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ”

【開発背景】

1980年、国産コンピューター製造の機運が高まり始めた。時流をいち早くとらえ、より精密な作業に向く"低発塵性手袋"の開発が開始された。手指が自在な柔軟性はもちろん、作業が長時間にわたることからすぐれた通気性も必須となった。新素材であるウーリーナイロン糸と、微細な連続気泡を生成する湿式ポリウレタン樹脂を採用。開発は難航を極めながらも、ムレを防ぐ低発塵性手袋『パームフィット』が誕生する。

手作りからスタートしたビッグ・ビジネス

『パームフィット』販売当初、ショーワグローブはハイテク産業への販売ルートをほとんど持っていなかった。売上の低迷から製造ラインは強化されず、家内制手工業に近い生産体制が続く。ほぼ手作りによる製造量では利益もごく少なく、プロジェクト自体の存続が危ぶまれた。
開発陣と製造担当者を支えたのは、「必ず求められる商品になるはず」という信念だった。考えぬかれた滑り止め加工、しなやかで柔らかいフレキシビリティ、長時間つけていても負担のない通気性…従来にない高品質だからこそ、ハイテク産業のみならず広く愛される自信があった。無償サンプル配布など営業サイドの努力も実り、認知度の向上から販売量が倍増。1989年の小規模の生産ライン実現を皮切りに、品切れ続出の爆発的ヒットへとつながっていった。

ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ” ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ”

【開発背景】

運送業で広く用いられる、手のひらにゴムのすべり止めを貼りつけた軍手。このタイプの手袋はとても丈夫である一方、細かな動きが難しいというデメリットがあった。荷物を運ぶときだけ着用し、伝票を書いたりリフトを操作するなどの作業は、わざわざ手袋を外して行う場面がよく見られた。
こうした煩わしさを解消すべく、より快適な使い心地の『グリップ』を開発。工夫をこらしたディッピング加工により、ゴム張り手袋の丈夫さに、柔らかさを加えた、より使い勝手の良い商品が誕生する。加えて手のひら部分だけにすべり止めを施す「背抜き構造」を採用し、長時間作業した場合の快適さを大幅にアップさせた。

ユーザー視線の使い勝手にこだわり、ショーワグローブの人気アイテムへ

従来のすべり止めつき手袋は、接着剤を塗った上にシート状のゴムを貼りつけていた。この加工方法では接着剤が硬くなってしまい、ゴムも均等に付着しない。結果として指の曲げ伸ばしが難しく、細かな作業に向かない要因となっていた。
そこで『グリップ』では、天然ゴムラテックスを軍手に直接コーティングする手法がとられた。やわらかく手指を動かしやすいほか、軍手の繊維にゴムがしっかり食い込んで剥がれにくくなる。しかし課題は多かった。手袋内部にゴムが浸透すると、そのまま固まって素手に触れるため、使用時に痛くなってしまう。浸透を抑える加工方法を探り、試行錯誤が繰り返された。また、より快適な使い心地にこだわり、「親指の甲まで」背抜き構造にすべく製造工程が考え抜かれた。
こうしたユーザー目線での開発が実を結び、今やショーワグローブの顔ともいえる商品にまで成長した。

ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ” ショーワグローブにしかつくれない“オリジナリティ”

【開発背景】

2000年代の前半、作業用手袋は「背抜きタイプ」が主流となっていた。高い通気性が求められるようになったためである。しかし背抜き手袋はその構造上、どうしても水や砂が入りやすい。一方、防水性などにすぐれたオールコート手袋(手袋全体に樹脂やゴムなどを使用)は内部がムレやすく、長時間の作業だと快適性が失われてしまう。
オールコートでもムレにくい作業用手袋を…無理難題とも思われる開発がスタートした。当時の最先端技術である、「透湿防水機能」を採用。水は通さず、手の皮膚から発する湿度は逃がす素材が用いられた。加えて手に自然にフィットするデザインを考案、作業効率やフレキシビリティが高められる。こうして、後の大人気商品となる『テムレス』が誕生した。

お客様の声から大幅リニューアル、大ヒット商品に

満を持して発売された『テムレス』だが、当初はなかなか受け入れられなかった。比較的高価(従来の手袋の2倍程度)だったことに加え、メインターゲットに据えた農業分野のユーザーが、作業用手袋に関して保守的だったためだ。ユーザーと直に接する代理店から、『テムレス』へのご要望・ご不満を根気よく収集した。手袋のやわらかさ、すべり止めの具合…改善点は多岐に渡った。
2009年、『テムレス』は大幅なリニューアルを行う。多くのご意見を取り入れて生まれ変わったテムレスは、急成長を遂げ大ヒット商品となった。さらには防寒タイプやジャージつきタイプなど、ラインナップをバラエティ豊かに拡充。登山やスポーツをはじめ、農業分野以外のさまざまなユーザーに愛用される定番アイテムとなった。

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