農作物の多様な魅力を引き出す。物流企業が挑戦する食品開発

農作物の多様な魅力を引き出す。
物流企業が挑戦する食品開発

園田 裕輔 さん Yusuke Sonoda

園田 裕輔 さん
Yusuke Sonoda

農作物に特化した物流企業、株式会社福岡ソノリク取締役。2021年にプロジェクト「ソノリク農作物劇場」をスタートさせ、そのプロジェクト・リーダーを務める。

九州に拠点を置く福岡ソノリクは、国内外の農作物を扱い、保存から輸送までを担う企業。同社は2021年に「ソノリク農作物劇場」という新しいプロジェクトを立ち上げたことで、ひときわ注目を集めています。これは、さまざまな理由で出荷が困難となった農作物から新たな魅力を引き出し、消費者の元に新しい商品として届けていくプロジェクト。物流企業が食品開発という未知の領域に乗り出した理由やこのプロジェクトへの思いについて、プロジェクト・リーダーの園田裕輔さんにお話を伺いました。

物流企業が試みるサステナブルな食品開発

――「ソノリク農作物劇場」とはどのようなプロジェクトなのでしょうか。

我々はスーパーマーケットに並ぶような野菜を運送することを主な事業にしていまして、「ソノリク農作物劇場」は農作物から新たな魅力を引き出し消費者の元に新しい商品として届けていくという、これまでの仕事とはまったく違う分野のプロジェクトです。

このプロジェクトを始めるきっかけになったのは、2020年にコロナの影響で飛行機がすごく減便してしまい、飛行機で運んでいたタイ産のオクラを輸入することが難しくなってしまったことでした。オクラは足が早いですし、現地で保管するスペースを確保するのも大変で、そのまま売るのが難しいという状況に追い込まれてしまった。そこで、オクラを使った加工食品を開発しようと考えました。

――オクラを生鮮なまま売れない状況から、食品開発というアイデアが生まれたのですね。

物流企業が試みるサステナブルな食品開発

オクラの問題を通じて、農作物の生産者はこういった鮮度の問題に常に直面し、すごく苦労されているということを我々も身を持って実感したんですね。野菜は新鮮であればあるほど良いと思われがちですが、それだけではない価値も備えています。例えば、熟成肉というものは一般的にもよく知られていますよね。それと同じような考えで野菜を捉えることもできる。じゃがいもやサツマイモなど、保存することで糖度が増すなどして付加価値が生まれるものがあるのです。

――「ソノリク農作物劇場」というプロジェクト名もユニークですね。

弊社だけでこのプロジェクトを引っ張っていくつもりはなくて、いろんな方々に参加していただきたいと思ったんですね。劇場に出るような感覚で、さまざまな方々に出演していただいて、みんなで楽しみながら農業を盛り上げていきたい。そう考えて「劇場」という言葉を使いました。

農作物の見方を変える場として、また農家の方々にとってもひとつの参考事例として見てもらえるプロジェクトとして「ソノリク農作物劇場」が育ってほしいと考えています。 また、農業が盛り上がることで、結果として我々の主な仕事である農作物の運送と保管業もさらに伸びると思っています。農業にはいろんな業界の方が参入してきてはいますが、農家の数自体は減ってきています。農作物の需要を底上げすることに少しでも寄与できるようなプロジェクトにしたいですね。

――新しいプロジェクトに取り組むにあたって、どのような点で苦労されましたか?

物流企業が試みるサステナブルな食品開発

食品業界は、我々の関わってきた農業とも考え方が違います。衛生面ひとつとっても全然違ってくるので、そういう点では苦労しました。

それから、我々は食品開発について素人ですし、加工することもできないので、このプロジェクトは専門家や加工の作業をお願いする会社などのパートナーといっしょに進めています。とは言え、そういったパートナーと協力してもの作りをすることに慣れていなかったですし、お願いする先を開拓する点でも最初は苦戦しました。

農作物の価値基準を変えたい。プロジェクトに託す思い

――プロジェクト第1弾の商品「御来楽(おくらく)」はオクラをパウダー状にした健康食品ですね。どのように開発されたのでしょうか。

農作物の価値基準を変えたい。プロジェクトに託す思い

まず、冷凍したオクラをどう加工するかを考えた時に、パウダー状にするというアイデアが出てきました。それ以外にも、オクラのふりかけとか、あるいはサプリメントとか、もう少し消費者も買いやすい形を探って試行錯誤もしたのですが、最終的には元のアイデアだったオクラのパウダーに落ち着きました。パウダーは、それをどうやって使えばいいのかがわかりづらいですが、使い方を限定しない分、可能性も広がります。このプロジェクトは「劇場」なので、これからいろんな人たちとコミュニケーションしながら、いろんな使い方を作っていけばいいのかなと思っています。

――「御来楽」の特色はどんな所にありますか?

お湯に溶かして飲んだり、料理に混ぜたりさまざまな使い方があります。パウダーなので、いろいろと形を変えながら食のなかに溶け込んでいけますし、それだけ皆さんの日々の健康に寄り添えるものだと考えています。それから、生のオクラが持つのは2〜3週間ですが、乾燥させて粉末にすると1年間は持ちます。それだけ保存が効くことも魅力的ではないでしょうか。

――プロジェクトとしての今後の展望や、新たに取り組みたいことについてお聞かせください。

農作物の価値基準を変えたい。プロジェクトに託す思い

農作物の流通の構造を変えていきたいという思いが一番大きいですね。常に鮮度を優先するだけではない、どう保管するのかを含めた流通の仕方を広げたいですし、形の悪いものを規格外品とするような価値基準だけで作物を測るあり方も変えていきたい。商品を販売するだけではなく、プロジェクトを通じて農作物の捉え方を変えるための情報発信もやっていきたいと思っています。

農作物を届ける「物流」という仕事

――物流のお仕事についてもお聞きします。農作物を管理、配送する上で気をつけている点、苦労される点を教えてください。

作物は、天候などに影響されて収穫量の変動がとても大きい。その物量に応じて、我々は配送する車の手配をコントロールしなければいけないという苦労があります。それから、商品の品質を保つために、輸送中や保管する時の温度に大変気を遣います。作物はひとつひとつに特徴があって、例えばサツマイモは冷蔵し過ぎると低温障害で痛んでしまう。商品によって保管温度を変えるということも我々の倉庫でやっています。

また、野菜や果物はエチレンガスを発するのですが、このガスで劣化してしまう品種もあります。我々は換気扇がついた冷蔵庫で農作物を保管し、エチレンガスを換気することで冷蔵庫の中を綺麗な状態で保っています。あとは野菜や果物はデリケートなものですから、荷扱いも気を遣うところですね。

――物流のお仕事をされるうえでの必需品はありますか?

農作物を届ける「物流」という仕事

荷物の積み下ろし作業など、商品が入った段ボールを扱う場合には、ほぼ常に手袋を使っていますね。荷物を滑って落とさないようにすることと、手の怪我を防ぐことが目的です。弊社の社員は以前から、ずっとそうやって手袋を使っていました。野菜や果物のパッキング作業でも手袋を使っています。

それから、倉庫でフォークリフトを使う運転手も手袋が欠かせません。運転にしても荷物の積み下ろしにしても、やっぱりゴム付きの手袋が良いですね。高いところにある荷物もゴムが引っかかるので簡単に取れますし、グリップが効くので、素手よりもずっと軽い力で作業できますから。

(2021年3月19日取材)

インタビューで取り上げた手袋について、さらに詳しく知りたい方はこちら

  • No.341 ライトグリップ

    強力なグリップ力と軽やかなフィット感

  • No.380R ブレスグリップ type-R

    滑りにくく、手のムレを軽減