時代の変化を乗りこなしながら、ミニの未来を創り続ける

時代の変化を乗りこなしながら、
ミニの未来を創り続ける

丸山和夫 さん

丸山和夫 さん
Kazuo Maruyama

丸山和夫 さん

ミニの専門店「ミニマルヤマ」代表。ミニ文化の仕掛け人であり、一度は製造終了した「ミニクーパー」復活の立役者としても知られている。

1959年にイギリスが生んだ小型車「ミニ」。
高性能で低燃費、コンパクトながら大人が4人乗れる車内空間が特徴で、ビートルズをはじめ名だたるアーティストやセレブリティをも魅了しました。
現在はBMW社がそのブランドを引き継いだ新型モデルを生産していますが、一方で2000年に製造終了した旧型モデルは「クラシックミニ」と呼ばれ、根強い人気を誇っています。

東京・墨田区の「ミニマルヤマ」は、そんなクラシックミニのファンなら知らない人はいないスペシャルショップ。創業者であり、国内外のミニ文化をリードし続ける丸山和夫さんにお話を伺いました。

感性を刺激する「憧れのミニ」をプロデュース

――ミニマルヤマはどんなお店ですか?

クラシックミニのスペシャルショップです。ショールームでは車両やパーツ類の展示販売を、整備工場では点検や整備、レストレーション(再生)などのサービスを行っています。クラシックミニの製造自体は20年以上前に終了していますが、うちの販売車両にはすべて新品のパーツを使っていますので、これから先も新車同様のミニをお求めいただけます。

――ミニの専門店を創業したきっかけをお聞かせください。

1969年にパリを訪れたとき、どの路地にもミニの姿があったんです。何気なく停まっているだけなのに、街の雰囲気とも相まって、とても可愛らしくてね。従来の「高性能・低燃費な英国車」というイメージを覆されました。そして「これは日本でも人気が出る」と直感。もともと小さくて高性能なものが好きな国民性です。このおしゃれな雰囲気が加われば、必ず愛されると。そして1973年、ミニマルヤマを創業しました。

私がこだわったのは、ミニのアーティスティックな表情を引き出すこと。色使いや小物使い、インテリアなどで、フランス風、もしくはイタリア風に演出したミニを送り出していきました。
同時に注力したのは「憧れのクルマ」というイメージづくりです。創業当時、ミニはほかの外車や国産車に比べて高額で、人気も下り坂。熱心なファンがごくわずかに残っているだけの状況でした。そこで考えたのが、うちがプロデュースしたミニを広告やテレビCMの大道具として使ってもらえるよう働きかけるという作戦です。これが奏功し、80年代には若い女性からも「ミニは可愛い、おしゃれ」という声が聞こえてくるようになりました。

――丸山さんといえば、一度は生産が終了した高級モデル「ミニクーパー」を復活させた立役者として、世界的に有名です。

この取り組みも、実は「憧れのクルマ」を追求する延長線上にありました。80年代にミニ人気が盛り上がったのはいいものの、輸入による供給が安定したこともあり、手を伸ばせば買えるクルマになってしまった。あらためて憧れの対象に押し上げようと、次なるミニのプロデュースに着手することにしたのです。その中の一つが、当時生産終了していたミニクーパーでした。

ミニクーパーは、イギリスのローバー社が製造していた高級モデル。F1の世界で名高いジョン・クーパー氏が手がけた高性能エンジンを搭載していました。このクーパー氏に直接協業を持ちかけたのです。墨田区の工場でリニューアルしたクルマに、彼が改良したエンジンを搭載。それが1986年に発売した「ジョン・クーパー」でした。ローバー社が販売していた約2倍の価格で売り出しましたが、あっという間に完売し、狙い通りミニが憧れのクルマとして返り咲きました。

その後、ローバー社からミニマルヤマにコラボレーションを打診され、ミニクーパーの製造も正式に再開されたというわけです。

〈ミニクーパーを復活させた当時の一枚。伝説のカーエンジニア、ジョン・クーパー氏とともに=写真提供:ミニマルヤマ〉

〈ミニクーパーの大好評を受け、感謝のしるしとしてローバー社から贈られたミニ。現存する中では世界最古とされる〉

ショールームには、ここにしかない商品と体験を詰め込んで

――ショールームを運営する上でのこだわりを教えてください。

もともとは「誰もが気楽に入れる店」というコンセプトでした。方針を変えたのは、現在の場所に移転した2000年。クラシックミニが生産終了した年です。この先は間口を広げるのではなく、ミニが大好きな人のための場所にしようと考えました。だからここ、フラッと立ち寄れるような店構えじゃないでしょ(笑)。入口も奥まっていて分かりづらい。あえてそうしています。

その代わり、わざわざ足を運んでくれたお客さんにとっては、居心地が良くて心から楽しめる場所にしたい。それがこだわりです。例えばこの品揃え。とにかく幅広い商品を用意し、すべて実際に手に取っていただけるようにしています。レアなパーツや往年のアイテムはもちろん、数百円の雑貨もあれば、子ども向けのおもちゃもある。10年に一つしか売れないような商品だって、棚から下げたりはしません。その一つを探し求めるお客さんがいつ訪れるか分かりませんから。オンラインショップでは決して味わえない、リアルな出会いや体験を重視しているんです。

手袋は第二の肌。一人ひとりにこだわりがある

――整備や点検におけるこだわりは何ですか?

第一は、安心・安全を提供することです。10年先も安心して乗り続けてもらうために、腕のいい整備士たちがとことん対応します。

クルマの整備や組み立ては非常に繊細な作業です。指先の感覚が命なので、本来は素手で行いたいところ。しかし、それではケガもしやすいし、ガソリンやオイルで肌も荒れる。やはり手袋が欠かせません。指先の感覚は生かしつつ、手を保護できて、破れにくいものが理想ですね。言うなれば第二の肌ですから、整備士たちも各々こだわって選んでいます。

――仕事ではどのような手袋を使っていますか?

ガソリンを扱うときは耐油性のもの、工具を扱うときはグリップ力の高いものという具合に、作業によって使い分けています。仕上がりが近づくにつれ、部品は小さく、作業は細かくなっていくので、最終工程では特に薄手のものに付け替えます。

最近使っているのは「ニトリスト・タフ」。非常に薄いのに、驚くほど丈夫なんです。若い整備士のひとりも「作業中に破れないのがいい」と喜んでいますよ。ふとしたことで破れると集中が途切れますし、作業効率も落ちてしまいますから。

新たな未来へ、クラシックミニを走らせ続ける

――製造終了から20年以上経った今もなお、根強い人気を誇るクラシックミニ。その理由は何だと思いますか?

サステナブルなクルマであることでしょうか。クラシックミニは、今どきのコンピューター制御のクルマと違って、構造がシンプル。だからカスタマイズやレストレーション(再生)がしやすいという特徴があります。親が乗ったミニを新品同様にレストレーションし、子どもが乗る。それをまたレストレーションして孫が、という具合に、長く乗り継ぐことができます。

もう一つ、60年間共通のパーツを使っているのも特徴です。うちにはあらゆる年代のパーツが揃っていますので、特定の年に製造されたものだけを集めれば、生まれ年ワインならぬ、生まれ年のクラシックミニをつくることだってできます。1980年生まれなら、1980年製の新品パーツだけでミニをつくる。そして一緒に年齢を重ね、レストレーションして次の世代に乗り継いでもらう。こんな楽しみ方ができるクルマは、ほかにありません。

――これから取り組みたいことをお聞かせください。

クラシックミニの電動化です。国会で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」という指針が示され、実質的にガソリン車を販売できない時代がすぐそこに来ています。この状況を逆手にとって、ミニもEV車にシフトするんです。「クラシックカー風のEV車に乗りたい」というニーズは間違いなくありますからね。技術的にはすでに完成していて、今は世に送り出すタイミングを見極めているところです。時代が変わるときこそ、新たな価値を創造するとき。ミニの楽しさはまだまだ続いていきます。

(2022年2月17日取材)

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