身近な自然と触れ合う。アウトドアプロデューサーが伝える「外遊び」の醍醐味
長谷部雅一 さん
Masakazu Hasebe
有限会社ビーネイチャー役員。米留学や世界旅行での体験を経て、アウトドアプロデューサーとしてキャンプ、バーベキュー、ハイキング、親子ワークショップなど、さまざまなアウトドアイベントの企画プロデュースを行っている。
キャンプ体験をはじめとするアウトドアイベントのプロデュースを行い、自然と人をつなぐためのさまざまなきっかけを日々提供している長谷部雅一さん。
公私を問わずアウトドアに親しんできた長谷部さんに、日常で自然に触れることで得られるものや、キャンプの道具づくりの楽しさについて伺いました。
自然を楽しみ、自然から学ぶ「アウトドアプロデューサー」という仕事
――長谷部さんはアウトドアの広範な分野で活躍されています。具体的にはどのようなお仕事を手掛けられているのでしょうか。
肩書だけだと何をやっているのかわからないかもしれませんね(笑)。環境教育や自然体験プログラムの企画・実施などをしている会社「ビーネイチャー」の役員として、様々なアウトドアイベントのプロデュースを行っています。保育園や幼稚園で自然と遊ぶ学びの場を提供したり、一般企業に出向いて、アウトドア活動でチーム力を高める研修を手掛けたりもしています。
最近はアウトドア雑誌を介して、地方自治体の取り組みに関わる機会も多いですね。それぞれの土地を活かしたトレイルコース作りやガイドの育成、周知するイベントの運営などをお手伝いしています。また、個人でアウトドアに関する原稿も執筆していますね。
そうやって、いろんな形で自然とのつながりを体験するきっかけづくりをしていたら、周りの人たちが「アウトドアプロデューサー」と名付けてくれたんです。
――アウトドアの世界に入ったきっかけを教えてください。
埼玉県で育ったのですが、小学生の時に子どもたちだけでテント泊をしながら、自転車で茨城県の水戸市まで行ったことがありました。水戸納豆は本当に美味しいのか確かめようと、親にご飯と市販の納豆を持たせてもらって、比較をしに行ったんです。お腹ペコペコでたどり着いての結論は「どっちも美味い!」だったのですが(笑)。
それから、高校生の時に世界史の授業で、教科書に書いてあることを事実だと鵜呑みにすることに納得できなくて、いつか現地で本物を見たいと思ったことも覚えています。それで大学を卒業してから丸一年をかけて世界一周の旅をしまして、さまざまなものを自分の目で見て体験できたことが大きかった。その感動を人と共有したいと思ったことが、今の仕事に繋がっているのかもしれません。
――自然に触れることで、どのようなことが得られるのでしょうか。
自然のなかで過ごすことは「どうにもならない状況を受け入れる」ということだと考えています。山で突然の雨に見舞われても天候を変えることはできませんし、前に立ちはだかる岩場を都合よく平らにすることもできません。人間はどうしたって自然にはかなわない。その状況のなかで、身体ひとつで何ができるか考えて行動することが求められます。でもそれは、自分自身と向き合って素直になれるチャンスでもあります。
職場でも家庭でも、人は自分の肩書きや役割に応じようとしますし、積み重ねてきたキャリアに対するプライドを持って生きていますよね。でも、自然を前にして、社会での肩書やキャリアは役に立ちません。そういう状況で、無心になって対応すること自体が、とても重要なのです。
「今」が少し変わるかもしれない。身近なアウトドアの楽しみ方
――アウトドアイベントの参加者は、どんな様子で自然と向き合っているでしょうか?
たとえば親子キャンプのイベントでは、火起こしができなくて親と子どもが一緒に困っていたりするんですよ。これはとても貴重なことです。日常では「親は子供よりもちゃんとしていないといけない」と考えてしまう。でも、親だってどうにもできないことがあるわけで、そこで親子で一緒に悩むことが大事なのです。そういう経験が、親自身の立ち位置が変わるきっかけになります。
アウトドアは、火の起こし方などのハウトゥーを学ぶことが本質ではありません。できない自分を受け入れて、「きっとどうにかなるから大丈夫」と考えられるようになることが大事。自然に入ることは、「今」がちょっと変わるきっかけになる。そこから生きる力が育まれると考えています。
――キャンプをしてみたいけれどハードルが高そうだと感じている人やアウトドア初心者には、どんな遊び方がオススメですか?
最初のうちは無理にテントに泊まらなくてもいいと思います。宿を起点にしたツアーを楽しんでもいいし、ガイドさんを頼ったっていい。アウトドアならこうしなければいけない!というルールはありません。コテージのあるキャンプ場でバーベキューを食べて、「おいしかったね」「星が綺麗だったね」と、それでいいと思います。何よりも楽しいと思えることが大事。そんな風に自然のなかで遊んでいれば、次はもっと歩いてみようとか、こんなフィールドに行ってみたいといった気持ちがおのずと生まれてくると思います。そうやってすこしずつ手を広げていって、アウトドアのいろんな楽しみ方を発見してほしいですね。
自分の手から「一点もの」を作りだすおもしろさ
――アウトドアの楽しみ方のひとつとして、ワークショップなどで「キャンプの道具作り」を紹介されていますね。
拾った木で作るスプーンや竹でできた箸、間伐材で簡単な椅子やお皿を作ったりしています。ワークショップでは、公園にある朽ちはじめた竹林の竹を切って、箸や串を削って作ったこともあります。自分が使う道具をゼロから作ることは、すごくおもしろい。既製品の方が使い勝手がいいことは多いんですけど、でも、筒状の竹がそのあと食べるラーメンのお箸になるというのは単純にうれしい。意外と思い通りにならないなかで、一点ものが生まれてくるよろこびがあります。この竹の箸も、かれこれ10年ほど使っているんですよ。
――道具作りの工程で必要になる物は何ですか?
僕の場合はアウトドアナイフを中心に、ナタやのこぎりなどさまざまな刃物を使っています。また、木を削る際には手袋が欠かせません。刃物を扱う時に限らず、アウトドアでは手の怪我が一番多いんですね。丸太を運ぶ時など、手が切れたり木片が刺さったりということがあるんです。
刃物を扱う時には、切れにくい繊維を使用した手袋の着用がおすすめです。軍手よりも安心・安全ですし、手にぴったりフィットするタイプなら、荷物を運んだりロープを結んだりする際にもそのまま使えて便利です。
これらの道具はアウトドアショップやホームセンターなどで揃いますよ。キャンプでは、その辺に落ちている木を削るだけでも無心になれておもしろいんです。まずは一度体感してみてほしいですね。
(2019年4月6日取材)
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